― 若き日の私が管理会社の社長に言われた、忘れられないひと言 ―
不動産オーナーになったばかりの頃。
右も左もわからず、それでも「どうにか早く満室にしたい」と、毎日焦っていたあの頃。
初めて購入した収益物件は、想像以上に決まらなかった。
【物件データ】
| 構造 | RC |
| 築年数 | 18年 |
| 戸数 | 28戸 |
| 間取り | 1K |
| 広さ | 28㎡ |
| 賃料 | 4万4000円 |
毎朝メールを確認しては「今日こそ申し込みがあるかもしれない」と期待し、毎晩、何も変わらない現実に落胆していました。
■ 管理会社に通い詰めた日々
当時、自社物件の管理はすべて、ある管理会社に一任していた。
でも、動かない現実がどうしても我慢できなかった私は、
担当者のもとへ何度も足を運んでいた。
◉ 「どうして入居が捗らないんですか?」
◉ 「どれくらい案内に行ってるんですか?」
◉ 「今、他にどんな物件と比較されてるんですか?」
◉ 「ネット広告の順位は?内見の抑えは?申込は?」
——今振り返れば、答えを外にばかり求めていたのだと思う。
■ 管理会社の社長から言われた、人生を変えた一言
ある日、担当者に詰め寄るような形になってしまった私は、
管理会社の社長に呼ばれた。
その方は、経験豊富なベテラン。
豪放磊落でぼくの憧れのひとでした。
そして、静かに、こう言われた。
「だいすけ、空室を埋める特効薬はないんで。」
その瞬間、脳内に雷が落ちたような気がした。
■ 効果がすぐ出る“何か”を探し続けていた
あの頃のぼくは、
「これをやれば入居が決まる」
「誰かが魔法のような打ち手を持っている」
そう思い込んでいた。
でも——
空室対策に、魔法も特効薬もない。
あるのはひとつずつ地道にやっていくという姿勢だけ。
この言葉が、ぼくの不動産オーナー人生を根底から変えてくれた。
■ トライアンドエラーの日々が始まった
そこから私は、思いつくことは全部やった。
◉ 物件周辺の清掃を自ら行い
◉ 共用部のゴミを拾い
◉ エントランスの照明をLEDに変え
◉ 募集写真を一新し
◉ キャッチコピーを100回以上練り直し
◉ 自らポータルサイトの表示順位をチェックし
◉ 近隣物件の内見まで客として体験しに行った
◉ 駐輪場の入り口の段差の解消
◉ ユニットバスをセパレートに
◉ 玄関扉にダイノックシート貼り
全ては、「誰かのせい」にしないために。
そして、「後悔しないために」。
■ 努力がすべて報われるとは限らない。けれど
ぼくは思います。
努力がすべて報われるわけではない。
でも、うまくいっている人は、みんな努力している。
そして——
努力せずに後悔する人は多いけれど、
努力して後悔している人には、出会ったことがない。
■ 「人事を尽くして天命を待つ」は、神頼みではない
今では「満室祈願」というサービスも提供している。
でもそれは、決して神頼みをしているわけではありません。
ご祈祷とは、努力を尽くしたあとに、心を整える行為だと思っています。そして、いつも、努力をした人のところにだけ訪れる当然の結果です。
🌿 最後に
空室を埋めるには、時間がかかります。
でも、その時間に「何を積んだか」が、物件の未来を決めます。
私は、管理会社の社長からもらったあの一言を、今でも大切にしています。
「空室を埋める特効薬は、ないんで。」
でも——
必ず空室は埋まります。
それは、地道に整え、見つめ、行動を続けた先にしか、現れない。
今日も、誰かの物件に、入居申し込みが入りますように。