不動産経営において、
設備投資も広告も、確かに重要です。
けれど、最後にモノを言うのは「人の手」「人の目」「人の心」だと、私は信じています。
■ あの日のエントランスでの出来事
ある日、私は自社物件のエントランスを掃き掃除していました。
季節の風が落ち葉を運び、排水溝にたまった砂をバケツの水で流していた、ただそれだけの午後。
そこに、不動産会社の営業の方が、内見のお客様を連れてやって来ました。
その方の娘さんが、はじめての一人暮らしを始めるための部屋を探していたのだそうです。
私が水を流している姿を見て、そのお客様が声をかけてくださいました。
「オーナーさんですか?」
「はい、そうです」と答えると、その方は言いました。
「オーナーさんが自らこうして物件を見回って、掃除もしているなんて…こんなに安心なことはありません。
娘を一人暮らしさせるには、これ以上ない防犯です。ここなら安心して住ませられます。」
その言葉に、胸が熱くなったのを今でも覚えています。
■ 地味なことが、実はいちばん入居促進になる
派手な広告よりも、最新設備よりも、
こうした目に見える【地道な姿勢】こそが入居を後押しすることがあるのです。
⚫︎ゴミステーションは常に清潔に保つ
⚫︎郵便受けのチラシはすぐに撤去する
⚫︎切れた共用部の電球はすぐ交換
⚫︎廊下の隅や階段の角も忘れず掃く
⚫︎雨の日は滑りやすい場所に雑巾を敷くこともある
こうした行動の積み重ねは、決して空振りにはなりません。
物件の雰囲気が明るくなり、空気が動き出し、運気が良くなるのです。
■ 年間稼働率94%を支えたのは、広告ではなく習慣
私の所有する物件は、年間平均稼働率90%以上を維持していました。
それを支えたのは、華々しい設備投資ではなく、
「物件を自分の家のように扱う」という姿勢だったと思います。
もちろん、自分ひとりでは限界があります。
ちゃんと定期清掃をプロにお願いしていました。
けれど、「プロに任せて終わり」ではなく、私は必ず現場を見に行きます。
■ クレーム対応こそ、ノウハウの宝庫
入居者からのクレームも、すべてを業者や管理会社に丸投げしません。
◎水漏れ?現場を見に行く。
◎騒音?時間帯をずらして現地確認する。
◎ゴミの不始末?掲示物だけで済まさず、声がけをしてみる。
もちろん、修理や法律に関わることは専門家に任せます。
でも、現場を見ずに「全部人任せ」は、ノウハウが身につきません。
むしろ、オーナーが顔を見せるだけでクレームが落ち着くことさえあるのです。
■ 動いた分だけ、物件は応えてくれる
不動産投資とは、資産運用である前に、
人の暮らしを預かる責任のある事業です。
物件は黙っていますが、よく見ていればオーナーの姿勢をちゃんと映してくれます。
放置すれば空気は澱み、
動けば運気入り込みます。
だから私は、
潮目を変えるのは、自分だと思っています。
🌿 最後に
どんなに広告を打っても、家賃を下げても、設備を整えても、
決まらないときは決まらない。
それでも「自分が動く」ことをやめないでください。
満室は、戦略と情熱の先にある。
私はこれからも、物件に愛情を込め、
ほうき片手にエントランスを掃きながら、
ご縁を待つ誰かのために、ドアを磨き続けようと思います。